私が自分の髪に異変を感じ始めたのは三十代に入ってすぐの頃でしたが、最初は単なる疲れや季節の変わり目による抜け毛だろうと高を括っていました。しかし、毎日鏡を見る中で、ある日決定的な違いに気づいたのです。それは「髪の立ち上がりの弱さ」でした。以前はワックスを少量つけるだけで一日中キープできていた前髪が、昼過ぎにはペタンと寝てしまい、地肌が見え隠れするようになったのです。これがAGAの初期症状であることを見分けるのは、知識がない私には至難の業でしたが、ある時ふと思いついて、実家にあった十年前の自分の写真と現在の自分を見比べてみました。すると、当時の自分の髪は一本一本が主張するように太く、額のラインも一直線であったのに対し、今の自分は生え際の毛が弱々しく、ラインが緩やかなカーブを描いて後退していることが一目瞭然でした。この「過去の自分との比較」こそが、最も残酷でありながら最も正確な見分け方であると痛感しました。その後、私は自分の抜け毛を観察する日記をつけ始めましたが、そこで気づいたのは、枕元に落ちている毛の中に、以前は見たことがなかったような「産毛のような細い毛」が大量に混じっていることでした。これは、髪が太く育つ前に成長を止めてしまっている証拠であり、典型的なAGAの症状そのものでした。また、頭皮の脂っぽさも以前とは異なり、夕方になると独特の匂いやベタつきが気になるようになったのも同時期でした。多くの人は「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせて現実から目を背けがちですが、私の経験から言えるのは、少しでも「あれ?」と違和感を持った瞬間に、それは気のせいではないということです。自分自身の髪質や生え際の形状、抜け毛の質という三つの視点から客観的に自分を観察し続けることで、ようやく私は自分がAGAであるという現実を受け入れ、適切な治療へと踏み出すことができました。今振り返れば、あの小さな違和感こそが身体が発していた最後の警告であり、それを見逃さずに冷静に分析したことが、結果的に最小限の被害で済ませることに繋がったのだと確信しています。
実体験から語るAGAの発症に気づくための観察日記